「真正な登記名義の回復」、一般の方はあまり聞いたことはないと思いますが司法書士には馴染みのある登記原因です。

そして依頼が多いのは年明けから確定申告の時期にかけてが多いです。

どのような登記なのかを今回は解説したいと思います。

登記原因というのは不動産の名義変更がされた場合にどのような理由で名義が変更されたのか、ということを表している箇所です。

登記原因は登記簿(登記事項証明書)にも載りますので公の情報です。

登記原因には「売買」「贈与」「相続」「遺贈」等様々なものがあります。

その登記原因のうち「真正な登記名義の回復」というのがあり、これはそのまま文字を読む通り「登記名義を真実の所有者にする」ための登記です。

具体的に見ていきましょう。

夫婦でお金を出してマイホームを買ったのに

真正な登記名義の回復登記とは - マイパートナー司法総合事務所

この登記の依頼として一番多いパターンは「実は不動産は夫と妻の二人でお金を出して買ったが名義は夫のみにしてしまった。」というケースです。

確定申告で住宅ローン控除の用紙を書こうとしたら出資を誰がしたか書くところがあり妻もお金を出しているが夫名義単独でどうしようというご相談や、税務署から夫名義単独なのは本当ですかといったお尋ねがあったという話も聞いたことがあります。

お金を出しているのに不動産を取得していない場合、贈与税が課されることがあるため正しい出資割合で登記をすることが大切です。

このように税金と不動産の持ち分が密接な関係であるため年明けの確定申告の時期に増えるご相談です。

正しい登記をするためには2パターン

この夫単独名義の誤った登記を夫と妻名義にするための方法は2パターンあります。

  1. 夫名義の登記を抹消し、一旦元売主名義に登記を戻した上で夫と妻名義にする(元売主の協力必須)
  2. 夫から妻へ真正な登記名義の回復を原因として夫と妻名義にする(元売主の協力不要)

正しい経過を登記簿に載せようとすると上記1の進め方が事実に合致します。

本当は最初から夫名義の登記が間違っているのでその間違った登記は抹消すべきです。

しかし、ここで引っかかるのは元売主さんの協力が必須という点です。

夫名義の登記を抹消するためには元売主さんが登記権利者、夫が登記義務者として一旦元の状態に戻し、さらにそこから夫と妻名義に登記を行います。

つまり行う登記は2回で売主さんのハンコや印鑑証明書が必要です。

売ったと思っている売主さんに「すみません、もう一度登記にご協力をお願いします。」というのはなかなかハードルが高いのではないでしょうか。

また、さらに問題となるのは夫名義の住宅ローンがある場合です。

住宅ローンがある場合、1の方法は金融機関の協力が必須です。

妻の返済能力がないと手続きに協力をしてくれない金融機関もあるため手続きには慎重にならざるを得ません。

パターン2の場合、売主さんの協力は一切不要です。

夫から直接妻へ妻の出資分だけの所有権一部移転登記を行います。

行う登記は1回です。

また金融機関の協力は登記上は不要です。(ただし所有権を一部移転することが金銭消費貸借契約違反になる場合があるので注意が必要です。)

真正な登記名義の回復の必要書類・期間

真正な登記名義の回復のために必要な書類を今回のパターンに当てはめてみると

  • 対象不動産の登記識別情報(権利証)
  • 夫の印鑑証明書(3ヶ月以内)
  • 妻の住民票
  • (登記簿の住所から移転をしている場合)夫の住民票

となります。

書類が揃えば1週間から10日程度で登記は完了します。

真正な登記名義の回復の登録免許税は不動産の固定資産税価格×1000分の20です。

不動産の契約時に「なんとなく夫単独名義で買う話が進んでそのまま不動産屋さんに言い出せなかった」という話をよく聞きます。

契約時に言い出せなくても決済時までに不動産やさんや金融機関に申し出れば当初の売買契約から買主を追加する覚書を作成してくれて正しい出資割合で登記をすることができるケースが多いです。

もちろん後から登記を直すことはできますが費用もかかることなので最初が肝心です。