実は後見制度って2つの制度の総称です。

一つは「法定後見制度」もう一つは「任意後見制度」です。

法定後見制度は判断能力が既に低下している人に代理人をつける制度で、任意後見制度は元気なうちに自分の後見人を決めておける制度です。

ニュースや役所、金融機関で後見人・成年後見人という言葉を目にする場合、2つの制度のうち法定後見制度の方を指しています。

任意後見制度はまだまだ利用者数が少ないのですが私が任意後見契約をオススメしたい理由を今回はご紹介したいと思います。

オススメ理由1 後見人になる人を決めておける

任意後見制度は自分と後見人になる人との契約です。

将来の自分の後見人を決めておけるので信頼できる家族や知人、専門家を指名しておくことができます。

法定後見の場合は誰を後見人に選ぶかどうかは最終的には家庭裁判所の判断です。

もちろん本人や家族の希望も出せますが高額な財産を保有したりしていると司法書士や弁護士などの専門職が後見人に選ばれることがあります。

本人が希望を言える判断能力が残っているか、という点も懸念されます。

やはり自分の財産を誰に任せるのか、ということは自己決定権の尊重という意味でもとても重要な点だと思います。

オススメ理由2 後見報酬を決めておける

任意後見制度は契約書の中で後見人への報酬を決めておくことができます。

無償でもOKですし、業務に見合うと考えられる報酬体系にすることもOKです。

後見人の報酬を決めておけるので将来どのくらいの費用がかかるのかを予想することができます。(とはいえ、判断能力が衰えて任意後見契約が発効した後の残された寿命はわかりませんのであくまで予想です。)

法定後見の場合は家庭裁判所が年に1回、本人の財産をベースに決めるので本人の希望は出せません。

オススメ理由3 任意後見監督人がつく

任意後見は契約をした段階では何も始まりません。

本人の判断能力が衰えたら後見監督人選任の申立てを家庭裁判所へ行い後見監督人がつくことで任意後見業務がスタートします。

任意後見監督人は通常司法書士や弁護士などの専門職が選ばれ、任意後見人の業務をチェックします。

任意後見監督人は不正な支出がないか、法律的に問題のあることをしていないかをチェックしてくれるので本人としては安心です。

任意後見監督人がついて任意後見人としては煩わしいと思う人もいるかも知れませんが本人にとってはいい制度だと思います。

ただし、本人が判断能力が衰えて任意後見監督人が必要な段階なのに財産管理委任契約等で対応が出来ているから任意後見を発効させないといったケースもあるのでこの懸念点への対応策は考えておく必要があります。

(任意後見契約を結んでいることを自分と任意後見人予定者だけではなく、ケアマネ、他の家族、専門家に話しておく等の予防策が考えられます。)

オススメ理由4 自宅の売却に家裁の許可不要

任意後見の契約書に「自宅の売却」について任意後見人に任せるといった内容があれば家庭裁判所の許可は不要です。

法定後見の場合、自宅の売却に家庭裁判所の許可が必須です。

後見人は売却をすることの必要性や売却価格などの正当性についての内容を盛り込んだ申立書を家庭裁判所へ提出し許可を出してもらいます。

任意後見の場合は本人が元気なときに任意後見人に自宅不動産の売却を任せていたという意思を尊重しています。

また自宅売却の際の任意後見監督人の同意の必要性についても予め本人が決めておきます。

任意後見監督人の同意が不要であれば、任意後見人のみで自宅不動産が売却可能です。

任意後見は安心な終活準備の一つ

任意後見は契約をしたとしても自分の判断能力が衰えない限りは使うことのない制度ですが、備えておけば安心の制度です。

まずは誰を任意後見人にするのか、といったことを考えてみるのが良いかもしれません。

弊所では任意後見契約書の作成も、任意後見受任者の受託も行っています。

なお任意後見人自体に就任してほしいというご依頼はご本人の年齢等によって複数もしくは法人後見でのご提案をさせて頂きます。