司法書士の業務の中で成年後見に関する業務が大きく分けて2つあります。
1つ目は成年後見に関する書類作成業務。
これは親族が成年後見人になりたい、または既に後見人等になっている場合です。
司法書士が親族の代わりに家庭裁判所へ提出する後見開始に関する書類や定期報書類作成する業務です。
(なお家庭裁判所へ提出する書類を作成できるのは弁護士または司法書士のみです。行政書士はできませんのでご注意ください。行政書士が本人名義で書類作成に携わることも違法です。)
2つ目は成年後見人になる業務。
身寄りがいないご本人や親族がいても適切ななり手がない場合などに実際に成年後見人となる業務です。
弊所では書類作成に関する依頼も、成年後見人になってほしいという依頼もどちらも対応可能です。
書類作成に関する業務は基本的に書類を作成すれば完了ですが、後見人になってほしいという業務はご本人の逝去まで続く期限の定めのない業務です。
今のところ、弊所はそこまで手一杯の件数ではないもののエンドレスに受けていたら大変なことになってしまうでしょう。
法律上は後見人を引き受ける件数に上限はありません。
しかしながら実際1人で何件くらいが現実的に受け持ち可能なのか考えてみました。
後見人の仕事
まず成年後見人の仕事リストから。
【財産管理部門】
- 金融機関へ後見人の設定
- 各種支払い(振込み・口座引落し・立替金の精算など)
- 各種還付金の受領手続き(ご本人口座への入金)
- 保険契約の確認・保険請求
- 相続手続き(遺産分割・相続放棄・相続登記・預貯金解約・相続税申告など、事案によって各種専門家へ依頼)
- 年金手続き(年金請求・受取口座変更など必要に応じて)
【身上保護部門】
- 施設契約の締結
- 施設選び
- 介護サービスの締結
- 後期高齢者医療保険・介護保険手続き(更新・還付金請求など)
- 住所変更
- 入退院手続き
これらに加えて家庭裁判所への報告が最低でも年に1回あります。
ご本人との面会も定期的に必要です。
後見人の忙しいタイミングは最初と最後
後見業務のうち最初と最後が特に忙しいです。
最初というのは後見人に選ばれて本人の財産と支出を正確に把握し、家庭裁判所へ財産目録と収支予定表を提出するまでです。
大体選任の審判書が届いてから2ヶ月くらいです。基本的に今まで関わりのない方の財産を調査するというのは結構大変です。
そもそもご本人が財産を把握して、自分で管理できていたら後見人はつかないのですから。
ご本人の親族や施設が管理していればその方からの財産の引継ぎ、本人が在宅の場合でなんとか自分で管理をしていた場合はご本人からの引き継ぎ(ときに家探し)を行います。
最後というのはご本人の逝去後のことです。
皆さん最後の時というのは突然ですし、医療関係者や福祉関係者から後見人宛にバンバン連絡が入ります。
ご家族がいる方であればいいのですがそうでないと後見人が火葬の手配をすることもあります。
後見人は本人の逝去から2ヶ月以内に最終の財産目録を家裁へ提出し最後の報酬付与の審判を受け、残りを相続人へ引き継ぎます。
これもまた限られた期間の中で本人の相続人へ引き継ぐというのは骨の折れる作業です。
相続人がいなかったり、相続人同士がもめているような場合はさらに時間を要します。
このように特に最後の時は作業が多いのですがいつ発生するのかわかるものではありませんし不幸が重なることもあります。
そのため急に忙しくなることもしばしばです。
また概して施設にいる方よりも在宅の方の方が割かれる時間が多いです。
急な入院やケガ、ヘルパーからの報告、本人の予想外の行動(頻回な電話や徘徊、悪徳商法対応など)も在宅の方の方が圧倒的に多いです。
後見人1人につき20人前後が限界?
このような中で何人までの受託が可能か考えてみると、私個人的な感想ですと後見業務がメインだとしても1人の後見人につきご本人対応20人〜30人くらいなのかなという印象です。
(私自身は今まで一度に20人を受け持ったことはないのであくまで予想です。)
在宅の方の割合が多いのであれば対応可能人数は減ってくると思います。
後見業務をサポートしてくれる事務員の人数にもよってくると思いますが事務員さんに任せられる業務(書類作成など)とそうでない業務(本人対応など)があるので人任せにも限界があります。
また他の司法書士業務(一般の方の相続手続きや決済案件、会社設立等)とのバランスもありますしここまでという上限は決められませんが事務員任せではなく本職がご本人と向き合うには人数を絞ることも必要と思われます。